「SILVER LINING」井原信次、江森郁美、手嶋勇気、七搦綾乃

 Hiroshima Drawing Labのオープンを記念し、2020年10月22日(木)から27日(火)までHDLメンバーによる企画展「SILVER LINING」を開催いたします。

 井原信次は、主にポートレイトを描くことを通して自己と他者との関係性やその境界について考察してきました。本展では、コロナ渦にあった東京で4年ぶりに再会した青年“Caro”を描きます。明らかに変わってしまった都市の姿と成長した彼の変化に向き合いながら、不鮮明に写る現実と記憶の痕跡を照らし合わせ、4年前に描いた彼のポートレートと再会後に制作された作品(ドローイング、ペインティング、写真など)を構成し、変化した街や人と人との繋がりを探ります。

 江森郁美は、朽ちていくものの儚さや静寂、薄暮の風景、それらが変化していく時間の揺らぎを心象風景として描いてきました。今夏、家の窓から入ってきた蜂たちが窓辺で息絶えていく様子を見て、イコノロジー的解釈でそれらを絵にしようと考えました。蜂にとって、家の窓は内と外の狭間であり、私たちが生活の場としている内側は、死を待つだけの場所になります。パンデミックによって露呈された「境界の曖昧さ」を、窓辺でみた蜂の死骸に重ね合わせ表現しようと試みました。

 手嶋勇気は、即興性の高いドローイング表現を用い、土地の歴史や文脈に自身が接続される試みとして「風景」を主な題材として描いてきました。本展では、コロナ以前に描いていた広島のランドスケープを発表します。コロナ禍であっても以前と変わらない「取材しては描く」ことを続け、スマートフォンのドローイング用アプリでスケッチした画像を絵の具などを用いてキャンバスに再現しています。変化していく社会の中で自身が感じるある種の捉え難さやコロナ前後の境界について考えます。

 七搦綾乃は、山や木、虹などの自然物や自然現象に強い関心を持ち、それらが持つはっきりと捉えられない「自然の時間」や「死」が持つ美しさを、主に木彫やドローイングで表現してきました。本展では、膨大な時間を積み重ね、形を変化させ続けている鍾乳石をモチーフに制作された新作のドローイングを発表します。石膏とジェッソで作った板の表面を彫ったり引っ掻くことで下地を見せ、線として描いています。鍾乳洞の天井から垂れ下がる石たちは、自然の時間が作ったカーテンのようです。

 展覧会タイトル「SILVER LINING」は、希望の光を表します。“Every cloud has a silver lining.”(どんなに厚く暗い雲でも、その裏側は銀色に輝いている)とあるように、パンデミック下においてもアーティストはその先の社会を見据え、それぞれの光を見つけ出すために創作活動を続けています。その中で制作されたアートワークには、時間や記憶のセグメントが介在し、それらを展示・記録していくことが今を生きるアーティストに与えられたタスクだと考えています。本展では、HDLメンバー4名の近作を紹介するとともに、そのコロナ渦に制作された作品を通して、私たちの中で今起こっている変化、あるいは、変化していないものを鑑賞者の方と考えられる場にできたらと考えています。



作家略歴


井原信次 Shinji Ihara

1987年、福岡県出まれ。2012年、東京芸術大学 大学院美術研究科絵画専攻 油画技法・材料研究室 修了。
主な個展に 、「誰も見ていないから」(ギャラリーアートもりもと、東京、2013)、 「RENDEZVOUS」(matchbaco、東京、2015)、「博多祇園山笠男絵図」(matchbaco、東京、2016)、「MEYOU」(KEN NAKAHASHI、東京、2018)。主なグループ展に、「IMAGO MUNDI 」ベネトンコレクション企画展(Fondazione Querini Stampalia、ベネツィア、2013)、「人の場を求めて」(旧日本銀行広島支店、広島、2015)、「ART TAIPEI」Y++ 和田 中橋より出品(Wada Fine ArtsとKEN NAKAHASHIによるプロジェクト)(台北世界貿易センター、台湾、2016)同展(Yiri Artsより出品、2018)、「新進芸術家選抜展 FAUSS」(3331 Arts Chiyoda、東京、2018)。


江森郁美 Ikumi Emori

1987年、長野県生まれ。2012年、広島市立大学 大学院芸術学研究科美術専攻 博士前期過程 修了。

主な個展に、個展(Lapisgallery、広島、2016、2018)、「鈍間の目vol.3」(ギャラリー交差611、広島、2019)、個展(高輪画廊、東京、2017、2019)。主なグループ展に、「第3回Femmes展」(高輪画廊/東京 2016 以後毎年)、「ヴェロン會2017」(高輪画廊、東京、2017 以後毎年)、「闇展Ⅲ」(あかね画廊、東京、2018、2019)。


手嶋勇気 Yuki Tejima
1989年、北海道生まれ。2006年、北海道伊達市の「だて噴火湾アートビレッジ 野田・永山塾」に入塾。2014年、広島市立大学 大学院芸術学研究科美術専攻 博士前期課程 修了。
主な展覧会に、「個展:ひろしまスケッチ」(ギャラリーG、広島、2020)、「specimen(s)」(EUKARYOTE、東京、2019)、「VOCA展2019 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」 (上野の森美術館、2019)、「個展:Landscape and sky」(7T Gallery、大邱、韓国、2018)など。展示ディレクションに「原民喜 -かすかにうずく星-」(ギャラリー交差611、広島、2018)。


七搦綾乃 Ayano Nanakarage

1987年、鹿児島県生まれ。2011年、広島市立大学 芸術学研究科彫刻専攻 修了。

主な個展に、「第10回 shiseido art egg 七搦綾乃展」(資生堂ギャラリー、東京、2016)、「Bank ART Under35 2017」(Bank ART、神奈川、2017)、「アペルト08 七搦綾乃」(金沢21世紀美術館、金沢、2018)、「rainbows edge」(アートギャラリーミヤウチ、広島、2019)。主なグループ展に、「5RoomsⅡ  けはいの純度」(神奈川県民ホールギャラリー、神奈川、2018)、3331 art fairにBlum & Poeより出品(アーツ千代田3331、東京、2019)、「9人の目 9人のアーティスト」(渋谷ヒカリエ8階 CUBE 1, 2, 3、東京、2020)、「リアリティを移す」(アートギャラリーミヤウチ、広島、2020)。



展覧会概要


名称: SILVER LINING

会期: 2020年10月22日(木) - 27日(火) 日曜・休 

時間: 11:00 - 18:00(入場は17:30まで)

会場: Hiroshima Drawing Lab(〒730-0017 広島市中区鉄砲町4-5 ブラック画材 4階)

H P: https://hiroshimadrawinglab.themedia.jp

お問い合わせ: hiroshimadrawinglab@gmail.com



Hiroshima Drawing Labについて


ヒロシマ・ドローイング・ラボ(HDL)は、2020年に広島市中区鉄砲町にオープンしました。常に変化していく現代社会において美術の表現形態は多様化し、その中でもドローイングはアートワークを形成する上で重要な役割を果たしてきました。それらドローイング表現に焦点をあて、アーティストによる展覧会の企画と開催、ワークショップ、レクチャーなどの活動を行なっています。




参考作品


井原信次 Caro

Oil on canvas, 41×31.8 cm, 2018


江森郁美 Sketch for the work

Pencil on tracing paper, 29.7×21cm, 2020


手嶋勇気 AID#10

Oil on canvas, 116.7×90.9 cm

2020 (Reference work)


七搦綾乃 Sketch for the work 

Plaster and gypsum gesso, pencil and ink, h90×w180×d3 cm

2020 (Works to be exhibited)

Hiroshima Drawing Lab

ヒロシマ・ドローイング・ラボ(HDL)は、2020年に広島市中区鉄砲町にオープンしました。常に変化していく現代社会において美術の表現形態は多様化し、その中でもドローイングはアートワークを形成する上で重要な役割を果たしてきました。それらドローイング表現に焦点をあて、アーティストによる展覧会の企画と開催、ワークショップ、レクチャーなどの活動を行なっています。